4月7日に始まった日本とシンガポールの新型コロナウィルス禍に対する行動制限は、奇しくもまた同じ6月19日から両国にて大幅に緩和され、はや一週間が経ちました。
しかし今なお世界的には予断を許さない状況が確認されています。
他家の脂肪由来幹細胞を用いたコロナ治験
そんななか日本の製薬会社やバイオベンチャーが新型コロナ禍への新たな処方として、新薬や新処置を提示し、ニュースとしてだけではなく、株式市場も騒がせていることを、お気づきの皆様も多いのではないか、と存じます。
メキシコの再生医療スタートアップとの提携により新型コロナ罹患者への幹細胞治療を行うと発表したテラ、大阪府との協力体制で新型コロナのワクチンを開発するというアンジェスなどの話題は毎日のように報道を眼にしています。
そしてここ数日で話題になっているのが、あのロート製薬が大阪大学 澤芳樹教授のアドバイスのもとに、新型コロナウイルス発症者に対して、間葉系幹細胞を
複数回投与し、サイトカインストームによる症状の重篤化防止を行う治験を開始するというニュースでした。僕がとりわけ驚いたのは、他家の脂肪由来間葉系幹細胞を使用する、ということでした。というのも日本においてiPS細胞をつかった治験は数多く発表されてきましたが、こと間葉系幹細胞は他家細胞(自分ではない人の細胞)を使った治験自体がほとんど行われてなかったからです。
この件は、本日、HALCoMSCにて詳細な解説記事を作りましたので、ぜひご覧いただければ、と存じます。
https://halcomsc.com/rohto-coronavirus-msc/
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他家の幹細胞でも拒絶反応は起こらない
さて、関連してですが、お客様に対して金太郎細胞の点滴投与についてのご説明の折に『自家ではなく他家細胞の投与ということで、ヒト白血球抗原(HLA:Human Leucocyte Antigen)の不一致などを因とした拒絶反応がおこらないか気になる』というところで御懸念をお持ちの方は常におられます。
結論を先ず書くと、金太郎細胞(他家/骨髄由来間葉系幹細胞)に限らず、間葉系幹細胞はその起源が脂肪であれ、臍帯であれ、歯髄であれ、骨髄であれ、拒絶反応は起こしません。
いずれもPrimitiveだから間葉系幹細胞と呼ばれている分化の途中のカテゴリー、
と今は確りと腹落ちしています。
実際…これまでの50年以上に及ぶ、世界での間葉系幹細胞を使った治療の副作用としては発熱、寒気、肝障害など軽微な副作用しか確認されていません。
そもそも間葉系幹細胞は主要組織適合抗原であるHLA-DR を発現していません。また免疫寛容能が高いことが知られています。
このため、HLA不適合の間葉系幹細胞を移植したとしても重大な免疫拒絶反応が
起こらないことが明らかになっているのです。則ち、どの間葉系幹細胞も拒絶反応は起こらないと言い切れるわけです(コンタミネーションがない限り)。
※ お時間が許せば、2014年に日大の細胞再生移植の専門医である風間智彦先生がまとめた論文をご確認ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/75/2/75_61/_pdf/-char/ja
引き続き弊社では世界の幹細胞に関する最新トピックをお伝えし、実際にクアラルンプールへのご案内を続けていきたいと所存です。